RSU(譲渡制限付株式ユニット)とは?仕組みやストックオプションとの違いも解説

Sasha Kiyokawa

外資系企業に勤めていると、給与や賞与とは別に「RSU」という言葉を目にすることがあります。付与の通知は届いたものの、そもそも何なのか、他の株式報酬と何が違うのか、税金はどうなるのか。このような疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか?

RSU(譲渡制限付株式ユニット)とは、一定の条件を満たしたときに自社株を受け取れる株式報酬です。この記事では、基本の仕組みから、ストックオプションをはじめとする他の株式報酬制度との違い、会社側と従業員側それぞれのメリットとデメリット、税務処理までをわかりやすく解説します。

また、外貨で受け取った売却代金を日本円に替える際には、ミッドマーケットレートを使って両替できる「Wise(ワイズ)」も選択肢の1つです。

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RSUとは?基本の仕組みをわかりやすく解説

株式報酬は種類が多く、名前も似ているため混同されがちです。まずはRSUがどのような制度なのか、基本から押さえていきましょう。

RSUとは?

「RSU(Restricted Stock Unit、譲渡制限付株式ユニット)」とは、一定の条件を満たしたときに自社株を受け取れる権利をいいます。付与された時点ではまだ株式そのものではなく、手元にあるのは「将来、株式を受け取れる約束」です。株式そのものが報酬になるタイプ(フルバリュー型)のため、ストックオプションのように無価値になる心配はありません。ただし株価が下がれば、受け取る株式の価値もその分下がります。1

※ユニット:「株式1株を受け取れる権利の単位」を指します。100ユニットなら、条件を満たしたときに100株が交付されるイメージです。

RSUの仕組み

RSUが実際の株式に変わるまでは、以下の流れです。1

  • 会社が従業員にRSUを付与します。
  • 権利確定(※)期間に、継続勤務などの条件を満たします。
  • 条件を満たすと、株式が交付されます。
  • 交付された株式は、売却も保有も選べます。

※権利確定(ベスティング):一定の条件を満たし、ユニットの数に応じた株式を受け取れる権利が確定することです。社内資料では英語のまま「Vest」と表記される場合もあります。

権利確定を段階的に設計する会社もあり、たとえば4年かけて毎年25%ずつ確定していく形が挙げられます。年数や割合は会社ごとに違うため、付与契約書で確認しておくと安心です。

権利が確定した株式は、その時点から売却できます。ただし売却は、会社が定めたトレーディングウィンドウ(売買してよい期間)や、インサイダー取引規制の範囲内で行う必要があります。2

RSUが注目される背景

日本でRSUが広がった背景には、主に以下の2つの要因があります。

  1. 改正会社法(2021年3月施行):上場会社が取締役や執行役の報酬として株式を交付する際、金銭の払い込みが不要になり、設計の幅が広がりました。3
  2. グローバルな人材獲得競争の激化:海外の企業は日本企業より株式報酬の割合が高い傾向にあり、現金給与だけでは優秀な人材を引き留めにくくなっています。1

RSUとストックオプションの違い

RSUとストックオプションの違いは、「株式そのものを受け取るのか、株式を買う権利を受け取るのか」という点にあります。1

  • ストックオプション:あらかじめ決めた価格(権利行使価額)で自社株を買える権利で、株価が上がった分だけ利益になります。ただし株価が権利行使価額を下回ればほぼ無価値になり、権利を行使する際には購入代金の払い込みも必要です。4
  • RSU:株式そのものが報酬になるフルバリュー型です。自己負担なしで株式を受け取れるため、ストックオプションのように株価が権利行使価額を下回って価値がなくなるリスクはありません。

※権利行使価額:ストックオプションを使って自社株を買うときの、1株あたりの購入価格です。株価がこの価格を上回るほど、差額が利益になります。

比較項目RSUストックオプション
株式を受け取るタイミング条件達成後に交付(後渡し)権利行使して購入したとき
自己負担なし権利行使価額の払い込みが必要
権利確定の条件勤続年数権利行使期間内の行使
主な目的人材定着株価上昇への動機づけ

RSUとその他の株式報酬制度との違い

株式報酬にはRSUのほかに「RS」や「PSU」があります。略称が似ていますが、株式を渡すタイミングと権利確定の条件が異なります。

RS(譲渡制限付株式)との違い

「RS(譲渡制限付株式)」は付与時点で株式が渡される先渡し型、「RSU」は条件を達成してから渡される後渡し型です。 RSは付与時点から株主になるため議決権や配当を受け取れますが、RSUは株式が交付されるまで議決権も配当もありません。また、RSは付与時点から株式を保有するため、専用口座での管理などの事務手続きがRSUより煩雑になる場合もあります。1+5

比較項目RSURS
株式を受け取るタイミング条件達成後に交付(後渡し)付与時点で交付(先渡し)
自己負担なしなし
権利確定の条件勤続年数勤続年数
主な目的人材定着人材定着と株主目線の共有

PSU(業績連動型株式ユニット)との違い

「PSU(業績連動型株式ユニット)」は、権利確定の条件がRSUと異なります。RSUの条件が主に勤続年数であるのに対し、PSUは業績目標の達成度が条件です。 そのためRSUは受け取れる株式数があらかじめ決まっていますが、PSUは達成度によって株式数が変動します。1

比較項目RSUPSU
株式を受け取るタイミング条件達成後に交付(後渡し)業績評価期間の終了後に交付
自己負担なしなし
権利確定の条件勤続年数業績目標の達成度
主な目的人材定着業績向上への動機づけ

RSUを付与する側(会社)のメリット

会社がRSUを選ぶ理由は、人材の確保と資金繰りの両面にあります。

① 優秀な人材のリテンション

段階的に権利が確定する設計にすると、「あと1年頑張れば次の株式が確定する」という気持ちが働きます。結果として**短期の離職を防ぎ、優秀な人材を中長期的に引き留められます。**人材の移動が活発なIT業界や外資系企業ほど、この効果は大きくなります。

② グローバル採用競争力の向上

現金給与だけでは大手グローバル企業と戦えない場面でも、RSUを組み合わせれば報酬全体の水準を引き上げられます。 海外では「給与+RSU」のパッケージで提示するのが標準的な慣行です。外国籍の高い専門性を持つ人材へのオファーで、特に力を発揮する手法と言えます。

③ キャッシュアウトを抑えた報酬設計が可能

現金給与を上げる代わりにRSUで補えば、今すぐ現金が出ていくわけではないため、**手元資金を温存しながら報酬水準を維持できます。**スタートアップや成長期の会社にとっては、資金繰りの面でも意味を持つ選択肢です。


RSUを付与する側(会社)のデメリット

一方で、会計処理と事務負担という課題も抱えます。

① 株式報酬費用の計上による利益への影響

RSUを付与すると、株式の価値を「株式報酬費用」として、勤務期間にわたって費用に計上する必要があります。上場会社が取締役や執行役に株式を無償で交付する場合、この金額は付与した日に計算し、原則としてその後は計算し直しません。5

そのため、株価が高い局面で大量に付与すればその分だけ費用も膨らみ、営業利益を圧迫することがあります。上場を準備している会社では、審査への対応という観点からも慎重な設計が求められます。

② 管理コスト・事務負担の増加

RSUの運用には、次のような事務が発生します。

  • 従業員ごとの権利確定スケジュールの管理:権利確定時の税金の事務。渡すのは現金ではなく株式のため、納税資金の設計まで必要になります。
  • インサイダー取引を防ぐための売却制限の管理:外国親会社が交付した場合、日本法人による調書(交付の内容を記載した書類)の提出。期限は翌年3月31日です。6

いずれも専門的な知識を要する業務です。社内に担当者を置くのか、外部の専門家に任せるのかという判断も必要になります。

③ 株価下落時のモチベーション低下リスク

RSUは株式そのものが報酬になるタイプとはいえ、株価が大きく下落すれば受け取る額も減ります。「もらえると思っていた金額より少なかった」という失望が広がれば、引き留めるはずの制度がかえって離職を招きかねません。


RSUを受け取る側(従業員)のメリット

受け取る側から見た利点は、主に次の3点です。

① 株価が下がっても価値が残りやすい(フルバリュー型)

ストックオプションは、株価が権利行使価額を下回ると、権利を持っていても使う意味がなくなります。一方RSUは、株式そのものを受け取る仕組みです。そのため、株価が横ばいや下落の局面でも、その時点の株価に応じた価値が手元に残ります。

② 株価が上がれば自分の報酬も増える

RSUの価値は株価に連動するため、株価が上昇すれば受け取る株式の価値もその分増えます。「自分の仕事が会社の成長につながり、それが株価という形で自分の報酬に返ってくる。」という実感が、日々の仕事への意欲を高める要素にもなります。

③ 中長期的な資産形成計画が立てやすい

権利が確定するスケジュールは、付与の時点で決まっています。「いつ、いくら分の株式が確定するのか」を事前に把握できる仕組みです。そのため、数年先まで見通した計画を立てやすくなるでしょう。


RSUを受け取る側(従業員)のデメリット

RSUを受け取る従業員のデメリットは、主に税金と為替にあります。

① 権利確定時に税金が発生する

RSUの税金は、以下の2つのタイミングで発生します。

タイミング何にかかるか税率
株式を受け取ったとき受け取った時点の株価に相当する額給与と同じ扱い

所得税5%〜45%(別に復興特別所得税)+住民税10%7+8

株式を売却したとき売却額と、受け取った時点の株価をもとにした取得費との差額20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)9+10

ここで戸惑いやすいのが、受け取るのは株式であって現金ではないのに、税金は現金で納める点です。高額な支払い義務だけが先に発生するため、納税資金は事前に準備しておきたいところです。権利確定にあわせて一部の株式を売却し、納税資金にあてる仕組みを設けている会社もあります。

また、外国親会社から直接交付される場合は、給与から天引きされないことがあります。その場合は自分で申告する必要があります。

② 退職すると未確定ユニットが失効する

権利が確定する前に退職すると、未確定分のRSUは原則として失効します。「あと半年で確定する予定だったのに」という状況は珍しくなく、この損失リスクを抱えたまま働くことになります。条件は付与契約や社内規程で異なるため、勤務先の規程を確認しましょう。5

③ 外貨建てRSUの為替変動リスク

外資系企業のRSUは、多くが米ドルやユーロなどの外貨建てです。日本円に換算した受取額は、権利確定時の為替レート(電信売買相場の仲値)によって決まります。そのため株価が上昇していても、円高が進めば手取り額が想定を下回るケースもあります。


RSU売却後の資金をどう活用する?

株式を売却しても、手元に残るのは外貨のままです。日本円に換える際、銀行や証券会社は為替レートにスプレッド(手数料)を上乗せするのが一般的です。明細に手数料として表示されないケースも多く、事前確認が困難なポイントです。11~13

税金だけでなく、この換金コストまで視野に入れておきましょう。なお、売却代金を外貨のまま持ち続け、後日日本円に両替した場合には、そこで生じた差額に税金がかかることもあります。

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よくある質問

RSUとはどういう意味ですか?

譲渡制限付株式ユニットの略称で、一定の条件を満たしたときに自社株を受け取れる権利を指します。よく似た略称にRS(譲渡制限付株式)やPSU(業績連動型株式ユニット)がありますが、株式を渡すタイミングと権利が確定する条件がそれぞれ異なります。

RSUは給与所得ですか?

株式が交付された時点の価値が、給与と同じ扱いで課税されます。日本の会社から交付される場合は給与から天引きされますが、外国親会社から直接交付される場合は天引きされないこともあります。その場合、年末調整だけでは完結しません。

RSUは退職時にどうなる?

多くの制度では、権利が確定していない分は退職によって失効します。すでに権利が確定して交付された株式は、退職後も自分の資産として保有できます。条件は会社ごとに異なるため、規程を確認しましょう。


まとめ

RSUは、一定期間の継続勤務などの条件を満たしたときに、自社株を受け取れる株式報酬です。購入代金の自己負担がなく、株価が下がっても一定の価値が残る点が、ストックオプションとの違いになります。

受け取る側が押さえておきたいのは3点です。

  1. 株式を受け取った時点で給与と同じ扱いで税金がかかること
  2. 売却益にはさらに20.315%の税金がかかること
  3. 退職すると未確定分が失効すること

売却後に残る外貨を日本円に換える際は、ミッドマーケットレート(仲値)を使って両替できる「Wise(ワイズ)」も検討してみてください。

出典
  1. 経団連:役員・従業員へのインセンティブ報酬制度の活用拡大に向けた提言 (2024-01-16)
  2. インサイダー取引規制 | 日本取引所グループ
  3. 法務省:会社法の一部を改正する法律について
  4. No.1543 税制非適格ストック・オプションに係る課税関係について|国税庁
  5. 実務対応報告第41号取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い
  6. F1-43 外国親会社等が国内の役員等に供与等をした経済的利益に関する調書(同合計表)|国税庁
  7. No.2260 所得税の税率|国税庁
  8. 総務省|地方税制度|個人住民税
  9. No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)|国税庁
  10. 個人の方に係る復興特別所得税のあらまし|国税庁
  11. 外貨預金の為替手数料 | 三菱UFJ銀行
  12. SBI証券->外国株式取引の受渡代金の決済方法について
  13. みずほ外貨普通預金
  14. 世界中の通貨が使えるアカウント | 国境のない金融 | Wise 日本
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