初めてでも簡単!個人事業主の開業届の書き方・提出方法

Yumiko Kijima

デジタル化やリモートワークが進む今日、会社を辞めて独立したいと考えている人も多いかもしれません。働き方の改革が進む中で、会社や組織に属さず個人事業主として働く選択肢も一般的となっています。

個人事業主として活動するには、開業届を提出する必要があります。この記事では、個人事業主として開業届を出す方法を詳しく解説しています。

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目次

個人事業主の開業届の基本知識

個人事業主とは?

個人事業主とは、法人を設立せずに、個人として事業を行っている人のことを指します。フリーランスと同じ意味で使われることもありますが、1人で会社を設立して働いている人などは、フリーランスであっても個人事業主ではないことになります。

個人事業主に職種は関係ありません。また、事業を開始したその日から個人事業主と名乗って活動することができます。

開業届とは?

開業届とは、個人事業主として事業を開始したことを税務署に知らせるための手続きです。事業開始の事実があった日から1か月以内に提出します(提出期限が土日祝日にあたる場合は、翌日が期限)。¹

提出先は、納税地を所轄する税務署となります。納税地は基本的に住所・居所のあるところ、もしくはオフィスなど事業所の住所でも構いません。提出方法は窓口への持参、郵送、もしくはe-Taxでのオンラインの3種類があります。

個人届は、提出しなくても罰則などが生じることはありません。提出することによって様々なメリットやデメリットがあることを理解しておきましょう。

個人事業主が開業届を出すメリット

1. 青色申告が可能になる

開業届と共に「青色申告承認申請書」を提出することで、個人事業主でも青色申告を行うことができるようになります。

青色申告って何?
青色申告とは、正しい様式に基づいた帳簿を備え付けることを条件に、所得税の計算などにおいて優遇を受けることのできる納税申告制度です。

青色申告を行うことで、所得から最高で55万円を控除できる青色申告特別控除(所得が低く計算されることで所得税が安くなる)や、家族に支払った給与を必要経費として計算できる青色事業専従者給与などの有利な制度を受けることができるようになります。²

青色申告についてより詳しくは国税庁のページを参考にしてください。

2. 事業名義(屋号)の銀行口座を開設できる

開業届には、事業名(屋号)を記載する欄があります。ここに屋号を記入すれば、多くの銀行で個人名ではなく屋号で口座を開設できるようになります。

(例)【個人名】 山田 陽子

   【屋号】 サンデザイン

屋号名の銀行口座を使うことで、クライアントや顧客などから信頼されやすくなります。また、プライベートと仕事用の口座を分けて管理しやすくなります。

3. 就労の証明になる

保育園の申し込みや海外ビザ申請などの際に「就労証明書」が必要になることがあります。この場合、法人に属している場合は会社から発行してもらえますが、個人事業主は自分で書かなければいけません。この際、開業届の控えのコピーを添えることが求められる場合もあります。

個人事業主が開業届を出すデメリット

1. 扶養に入れなくなる可能性がある

配偶者などの扶養に入っている場合、ケースによっては扶養を受けられなくなる場合があるので注意しましょう。個人事業主が扶養の対象となるかどうかは、年収などの細かな条件や保険の種類、各保険の規定などによって異なります。事前に家族が務める企業などに問い合わせて確認しましょう。

扶養から外れた場合は自身で保険料を納付する必要が生じます。

2. 失業手当が受けられなくなる

開業届は「事業を開始する」意思を提示する書類です。そのため、開業届を出した時点で失業状態ではないことを意味することになり、失業手当を受けることができなくなります。

特に、副業として開業届を出し、その後勤務する会社を退職した場合、勤務保険による失業手当を受けられなくなるため注意しましょう。

開業届にかかる費用

開業届の提出は無料で行えます。¹

開業届を提出する際の流れ

個人事業主が開業届を提出する流れは以下の通りです。

STEP1:開業届を手に入れる
税務署で取得、または国税庁のWebサイトからダウンロード

STEP2:開業届を記入する
記入方法は以下で詳しく解説

STEP3:開業届と本人確認書類を提出する
税務署窓口、郵送、e-Taxで提出可能。提出方法も以下で詳しく解説

開業届の書き方

では早速、実際の開業届の書き方を見ていきましょう。記入は手書き、またはパソコンでの記入のどちらでも構いません。

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①税務署

提出する税務署を記入しましょう。例:杉並 税務署長

どの税務署に提出するかは、以下で解説する納税地によって決まります。

②納税地

納税地は基本的に、事業主本人の生活の拠点となる住所(「住所地」)を記入します。その他に、事業を行っている店舗や事務所、オフィスがある場合はその住所(「事業所等」)を記入することができます。また、賃貸物件の住所であっても問題ありません。

「居所地」は実際に住んではいないが、活動の中心がある場所のことを指します。海外に住んでいるが事業は日本で行っている場合などに「居所地」を記入すればいいですね。

いずれの場合も、開業届は納税地を管轄する税務署に提出します。

住所地・居住地・事業所等・納税地の定義
  • 住所地:生活の拠点がある住所(自宅など)
  • 居所地:生活はしていないが活動の中心がある住所(実家など)
  • 事業所等:オフィスや店舗など、事業を行っている場所の住所
  • 納税地:住所地、居所地、事業所等のいずれか1つ

例えば、東京都杉並区下高井戸に住んでいる個人事業主なら、納税地も同じになるので、杉並税務署に開業届を提出しましょう。³

自分の住んでいる地域を管轄する税務署がどこにあたるのかは、国税庁のページから簡単に検索できます。

③個人番号

個人番号とは、マイナンバー番号のことです。開業届を提出する際には、同時にマイナンバー書類も必要になります。

④職業

これから個人事業主として活動していく職業名を記入します。職種によって個人事業税の税率が異なるため、この欄は的確に記入しましょう。⁴

【職種による個人事業税】

事業の種類
第1種事業(37業種)5%物品販売業運送取扱業料理店業遊覧所業
保険業船舶定係場業飲食店業商品取引業
金銭貸付業倉庫業周旋業不動産売買業
物品貸付業駐車場業代理業広告業
不動産貸付業請負業仲立業興信所業
製造業印刷業問屋業案内業
電気供給業出版業両替業
冠婚葬祭業土石採取業写真業公衆浴場業(むし風呂等)
電気通信事業席貸業演劇興行業運送業
旅館業遊技場業
第2種事業(3業種)4%畜産業水産業薪炭製造業
第3種事業(30業種)5%医業公証人業設計監督者業公衆浴場業(銭湯)
歯科医業弁理士業不動産鑑定業歯科衛生士業
薬剤師業税理士業デザイン業歯科技工士業
獣医業公認会計士業諸芸師匠業測量士業
弁護士業計理士業理容業土地家屋調査士業
司法書士業社会保険労務士業美容業印刷製版業
海事代理士業行政書士業コンサルタント業クリーニング業
3%あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復・その他の医業に類する事業装蹄師業

⑤屋号

屋号とは、個人名の他に利用できる事業名のことです。ここに屋号を記載すれば、後に屋号での銀行口座を開設することなどができるようになります。屋号がなければ、空欄のままでも構いません。

⑥届出の区分

届出の区分では「開業」にチェックを入れます。事業を他の人から引き継いだ場合は、誰から引き継いだのか、その氏名と住所を記入しましょう。

⑦所得の種類

所得の種類を選択します。不動産所得、山林所得以外は全て「事業(農業)所得」になります。

⑧開業・廃業等日

事業を開始した日付を記入します。開業届は一般的に、開業日から1か月以内に提出する決まりになっていますが、遅くなった場合でも罰則などは特にありません。ただし、青色申告承認申請書は事業を開始した日から2か月以内に提出しないと、その年の確定申告に適用されないため注意が必要です。開業届と一緒に青色申告承認申請書を提出しようと考えている人は、気をつけましょう。⁵

⑨事業所等を新増設、移転、廃止した場合/廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合

それぞれ、新規開業の場合は記入する必要はありません。

⑩開業・廃業に伴う届出書の提出の有無

開業届と一緒に青色申告承認申請書、または課税事業者届出書などを提出する場合は、ここにチェックを入れます。

⑪事業の概要

事業の内容を具体的に記入します。例えば職業欄に「デザイン業」と記入した場合、事業の概要には「英語・日本語でのホームページ作成とロゴ・バナーのデザイン」などのように、実際にどのような仕事を行うのかが分かるように記入します。

⑫給与等の支払の状況

自分以外に従業員を雇う場合に記入します。専従者は家族(配偶者や15歳以上の親族など、生計を共にしている人)、使用人は家族以外の人を雇うことを指します。⁶

青色申告を行えば、家族(専従者)への給与は必要経費に含むこともできます。

⑬源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無

従業員を雇っており、源泉徴収の義務がある場合、通常は源泉徴収を行った翌月の10日までに納税しなければいけません。ただし、従業員が常時10人未満の小規模事業の場合、特例として年2回にまとめて納税することもできます。この特例を利用したい場合は、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出し「有」にチェックを入れます。⁷

⑭給与支払を開始する年月日

従業員に給与を支払い始めた日、または支払いを開始する予定の日を記入します。

開業届を提出しよう!提出方法・提出先は?

開業届の記入が完了したら、早速税務署に提出しましょう。提出方法は以下の3通りあります。

直接窓口に提出

納税地を管轄する税務署に出向いて提出します。受付時間は8時30分から17時までです。ただし、税務署の閉庁日(土日祝日等)は、時間外収受箱に投函することも可能です。¹

税務署の所在地は、国税庁のページから検索できます。

郵送

担当の税務署に郵送で送付することもできます。税務署の住所や問い合わせ先は国税庁のページから調べることができます。

オンライン

開業届はe-Taxを利用してオンラインからも提出することができます。この場合、事前にe-Taxの利用開始届出書を提出し、e-Taxソフトのダウンロードを行っている必要があるため注意しましょう。また、ICカードリーダライタも必要になります。

e-Taxの使い方に関して、詳しくは公式ホームページを参考にしてください。

開業届とともに提出が必要な書類

開業届を提出する際には、同時に本人確認書類(身元確認書類+番号確認書類)の提出が必要になります。⁸

本人確認書類は窓口で職員に提示するか、コピーを開業届に付して提出しましょう。

【マイナンバーカードを持っている場合】

マイナンバーカード1枚で番号確認と身元確認が完了します。

【マイナンバーカードを持っていない場合】

番号確認書類いずれか1つ、加えて身元確認書類いずれか1つの提出が必要です。

番号確認書類身元確認書類
  • 通知カード
  • マイナンバーの記載がある住民票の写し
  • マイナンバーの記載がある住民票記載事項証明書
  • 運転免許証
  • パスポート
  • 公的医療保険の被保険者証

開業届を提出したら、控えをもらっておくと安心!

個人事業主は法人と違い、実際に事業を行っている証明になる書類がありません。そのため、就労や事業の有無を証明する必要がある場合は、開業届の写しを提出することになります。そのため、開業届を提出する際にはあらかじめ控えをもらっておくと安心です。開業届のコピーは最低でも1枚は常に手元にあると良いですね。

受領印のある控えをもらうには、開業届の提出時に控え用開業届を添付します。郵送の場合には、控えと一緒に返信用封筒を同封しておけば返送してもらうことも可能です。

e-Taxで提出した場合は、受領時に受信通知のメッセージを受け取ります。この受信通知と提出した開業届のデータを印刷して控えとすることができます。

税務署で開業届を閲覧することもできる

提出した開業届は、後に税務署で閲覧することもできます。この際コピーすることはできませんが、スマホやカメラなどで写真撮影することは可能です。⁹

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  • 日本から海外へEショップを展開している...
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個人事業主として、なるべく安いコストで海外とのビジネスが進められるといいですね。

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まとめ

この記事では、個人事業主の開業届の記入や提出の方法を見てきました。

開業届は国税庁のホームページから書式をダウンロードして簡単に記入できます。提出にあたって手数料もかかりません。窓口に直接出向いて提出、または郵送やオンラインでの提出も可能です。提出時には本人確認のできるものが合わせて必要です。

個人で法人を設立せずに事業を行う場合は、開業届を提出することができます。開業届は提出しなくても罰則などはありませんが、提出することにより様々なメリットがあります。

これから個人事業主として活動する予定の人は、開業届の提出を検討してみるとよいですね。


ソース

  1. [手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
  2. No.2070 青色申告制度|国税庁 - 所得税
  3. 納税地はどこですか?
  4. 個人事業税 | 税金の種類
  5. 書 き 方
  6. No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除|国税庁
  7. No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例|国税庁
  8. 番号制度に係る税務署への申請書等の提出に当たってのお願い|国税庁
  9. 申告書等閲覧サービスの実施について(事務運営指針)|国税庁

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